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 青島 凌也(東海大相模)投手 177/76 右/右
 




「余力がない」 





 夏の甲子園・盛岡大附戦の投球を思い出して欲しい。青島 凌也 は、立ち上がりから素晴らしいストレートの伸びに、コーナー一杯に決まるコントロール、抜群の変化球とのコンビネーションと、全く隙なしの投球を披露した。しかし青島の投球を見ていると、立ち上がりは素晴らしいのだが、試合中盤で捉まることが多い。こういった投球を見て思い出すのは、東海大時代の 久保 裕也(巨人)。久保は、アマ時代典型的な先発タイプだと思わせる好投手だった。しかしプロで適正を示したのは、リリーフの方だった。

 青島の投球というのは、立ち上がりが10で、あとは落ちて行く一方。相手も球に慣れてきた中盤、彼自身のボールのキレも鈍り、余計に捉まりやすくなる。これでも余力のある投手ならば、1試合押し切ってしまうのだが、この投手は体格の無さもあって、それができないで終わる底の浅さが、どうしてもピッチングに出てしまうのだ。体格のない投手こそ、1試合トータルで注視して欲しい。


(投球内容)

 軸足一本で立った時のYの字のバランスなどは、かつての 桑田 真澄(巨人)を彷彿とさせる。いかにも、投手としての筋の良さを感じさせるのは充分だ。

ストレート 常時130キロ台~MAX143キロ

 特に盛岡大附戦は、立ち上がりから140キロ台を連発し、そのインパクトは強烈だった。特に彼の素晴らしいのは、スピンの効いた独特の球質。これほどスピンを効いた球を投げるのは、唐川侑己(ロッテ)や、与田剛(元中日)などを思い出させる。

 その抜群のスピンの効いたストレートを、コーナー一杯に決めるのだから、立ち上上がり手も足も出ないのは当然だろう。しかしスピンも低めに集まっていたコントロールも、試合中盤になると陰りを魅せ浮き出すのだ。けして余力のある投手ではないので、これを1試合トータルで続けられるわけではない。

変化球 カーブ・スライダーなど

 甲子園では、緩いカーブで上手く緩急を使ったり、縦・横二種類のスライダーなどを駆使し、相手に的を絞らせない工夫は感じられた。カーブのブレーキも良いし、スライダーのキレもけして悪くない。それでも投球の浅さは、どうしてもイニングが進むにつれて出てしまう。

その他

 クィックは、1.1秒前後と素早い。牽制は殆ど観られなかったが、フィールディング等含めて野球センスが高い選手で、問題はなさそう。

 中学時代から名の知れた投手だけあって、マウンド捌きも洗練され、ポンポンとテンポよく投げ込んで自分のペースに相手を引き込んで来る。

(投球のまとめ)

 素晴らしいボールの伸び、変化球とのコンビネーション、制球力と兼ね備え、高校生としては極めて高い総合力を持っている。しかしそれを持続できるだけの体力・精神力に欠け、どうしても全国レベルの打力があるチーム相手になると、試合中盤に捉えられしまう、底の浅さが垣間見られる。

 高校からプロに入る選手というのは、「野球が上手い子ではなく凄い子」であり、彼は典型的な「野球が上手い子」というタイプ。彼がプロ入りするためには、今の投球を9回まで持続できる圧倒的な体力と精神力を養うか、力の入れどころ抜きどころを覚えて、要所で力を出すような投球を身につけるのかのいずれかだろう。


(投球フォーム)

ノーワインドアップから、足はゆっくりと高く引き上げてきます。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を空中でピンと伸ばしきることなく、お尻を落としてきます。そのためお尻の一塁側への落としは多少甘いのですが、大方落とすことは出来ています。そのためカーブで緩急をつけたり、フォークのような球種も問題はなさそう。

 「着地」までの粘りは平均的で、体を捻り出す時間も並。元々手先が器用なタイプみたいで、変化球自体投げるのは苦にならないようだが、武器になるほどの絶対的なキレや曲がりの大きさが身に付けられるかは微妙。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにあり、両サイドの投げ分けは安定。しかし足の甲の地面への押し付けが浅く、ボールが上吊りやすいフォーム。それでも「球持ち」の良さを活かして序盤は低めに集めらるが、握力が鈍って来るとボールが上吊ってしまう傾向にあります。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻の落としに甘さは残すものの、カーブで緩急をつけたりしても、肘への負担は少なそう。腕の送り出しにも無理はなく、肩への負担も少なそう。しかし結構な力投派なので消耗が激しく、疲労を貯めこまないことが故障をしない重要な要素。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りも、体の「開き」も並なので、打者としては合わせやすいわけでも、苦になるわけでもないオーソドックスなフォームだと言えます。

 腕は非常に強く振れるので、速球と変化球の見極めは困難。ボールにも体重を乗せられていますが、足の甲でもっと深く抑えつけられると、更に下半身のエネルギー伝達は効率よくなりそう。ただし膝小僧に土が着くほど重心を沈め過ぎてしまうと、前に体重が乗って行かないので注意して欲しいポイント。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」こそ素晴らしいですが、あとの部分は可も不可もなしといった平均的なフォーム。

 故障のリスクはそれほど感じませんが、疲れを溜めすぎないこと。更にコントロールに関しては、ボールが疲れて来ると上吊って来ることを注意したいですね。そういった意味では土台は良いのですが、まだまだ発展途上だとも言えます。


(最後に)

 やはりこうやって見ると、技術的にも発展途上であり、余力のない投球を見ていると、大学でワンクッション置いた方が良いと個人的には考えます。ただし高校生としては、すでにかなりハイレベルなところまで来ているjので、1年秋ぐらいからは主戦として活躍できる完成度を誇ります。

 ここからは、いかに本人が志し高く、将来を見据えることができるのかということ。計画性を持って課題に取り組み、段階を踏んでパワーアップを図って行けるのか。体格に恵まれず底の浅さが見え隠れする投手だけに、地道にそれを払拭する努力をし、自らの可能性を追求して欲しいと思います。そうすれば卒業する頃には、最上位でのプロ入りも、けして夢ではないでしょう。その時が来ることを、今から期待してやみません。「急がばまわれ」の精神で。


(2014年夏 甲子園)









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